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2013-01-19

ネットアイドル屋

12:00 | ネットアイドル屋 - eigokunの手記 を含むブックマーク はてなブックマーク - ネットアイドル屋 - eigokunの手記

今日は都内某所のネットアイドル屋に行ってきた。全国から集められたネットアイドルを好事家に売ってくれるお店だ。ネットアイドル通販サイトでは飽き足らない僕は、ついに足を運んだ。

店内には所狭しとネットアイドルが並べられている。中には戦後すぐに売りに出された年代物もある。店主に話を聞くと、どうやら彼女は戦時中はネトウヨとして発言し人気を集めていたのだが、敗戦によって世の中の価値観が逆転したためブログが炎上し価格が暴落したところを先代が買い叩いたらしい。僕はこのネットアイドルを買うことにした。といっても彼女は88歳らしい。認知症を患い介護が必要だったため、店主としては売れてくれて大助かりだったようだ。店主から頬にキスされた。僕は300円で彼女を買ったのだ。

彼女を車椅子に乗せて街を歩いていると、何やら通りが騒がしい。どうやら原発デモをやっているようだ。あまり人の多いところに彼女を連れて行くのは危険なので、遠回りしようとした。そのとき、彼女が叫んだ。

「・・・売国奴はこの国から出てけ!!」

正確には、よく聞こえなかった。だから原発デモの連中も、何を言ってるのかよく分からなかったので単に驚いただけだったのだろう。そのまま通り過ぎていった。僕は内心ドキドキしていた。もし彼らにババアが何を言ったのかバレていたら只事ではない。おそらく彼らはスマホを取り出し、我々の姿を写真に撮りSNSに載せ、「拡散希望!」と我々を炎上せしめるに違いない。彼女が現役のネトウヨだった頃は世の中はイケイケムードで、やれ鬼畜米英だ八紘一宇だ言っていた。しかし今は戦後だ。自民党と社会党の二大政党制の時代である。そんな中では彼女の愛国的なメッセージも、時代遅れの一世風靡セピアのように思われるだけだろう。しかし彼女がが一世風靡セピアなら、彼ら原発デモの連中は竹の子族である。竹の子族というのはフーテンを格好よく言ったものに過ぎない。社会に対し無責任なフーテンと一緒だ。

僕はババアの肩を抱いて「落ち着いて。もう帰ろう」と言った。僕の目にはババアが頬を赤らめたように見えた。いや違う。彼女は目に涙を貯めていたのだ。だからこそ僕にはパブロフの犬的な理由で、「目に涙を貯める→頬を赤らめてるように見える」という連想が働いたのだ。彼女は泣いていた。

なぜ泣いているのか問うた。彼女は首を振る。そのとき、僕は気付いた。彼女の下半身が濡れていることに。そう、彼女は失禁していたのである。原発デモという魔女狩り集団を目の前にして身の危険を感じたのだろう。彼らリベラル連中はネトウヨであるババアの首を包丁で切り落とし串で刺して東京ドームのてっぺんに飾るに違いない。という被害妄想がババアを襲い、全く罪の無い原発デモ連中を指さして「ア、ア、アアーー・・・!」と叫ぶので僕はとっさに口を塞ぐ。

そしてババアをそこに残し、ドラッグストアへと走る。ババアが失禁したので行く必要ができたのだ。

「大人用オムツください」

「あいにく、今は紙おむつは切らしてるんだよね。中東がこんな情勢だからねえ。まったくジュー(ユダヤ人)どもが」

そう、今はオイルショックのまっただ中。紙は貴重品だったのだ。僕はババアにそれを告げた。するとババアは僕に言い放った。

「石油が簡単に手に入らない時代に脱原発を叫ぶなど笑止千万。これは消費増税に反対するくせに社会保障を削るのにも反対するようなものじゃ。奴らは矛盾している。これが今の日本か。一度北朝鮮にミサイルでも打ち込まれればいいんだわい」

まるで石原慎太郎のような物言いだ。そしてババアは続ける。

「それにはまず自分から見本を見せようかね。今から行くよ、姥捨て山に」

彼女は社会保障費削減のために、自ら姥捨て山に赴くというのだ。確かに老人ホームや高齢者医療は国の財政を圧迫している。しかしいくらネトウヨだからといって、そのような新自由主義的な方向性を指向する必要があるのだろうか。

そうか。我々が先の戦争で負けたのは全体主義のせいだ。だから今度は小さな政府を目指すというのか。今のババアは完全にアメリカ、いや共和党かぶれだ。そして彼女は最後に言い放った。

「イスラエルさんよ、一緒に戦おうや」

そして彼女は汽車に飛び乗った。原発が止まっているから電車が走らないのだ。汽車の終点駅は姥捨て山である。僕は汽車が見えなくなるまで見送った。汽車の煙が、なんだか火葬の煙のように僕には見えた。

JacobJacob2013/12/26 20:55This is both street smart and ingliletent.

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